高知地方裁判所安芸支部 事件番号不詳 判決
主文
原告が被告から昭和三十年一月二十二日弁済期を同年四月末日とし、利息の定めなく借り受けた金十万円の債務は存在しないことを確認する。
被告は原告に対し別紙目録記載の物件に対する高知地方法務局室戸出張所昭和三十年一月二十二日受付第一一五号債権額金十万円の抵当権設定登記の抹消登記手続をなせ。
被告は原告に対し金四十万円を支払え。
原告の高知地方裁判所安芸支部昭和三二年(ケ)第二五号不動産競売手続開始決定の取消を求める部分はこれを却下する。
訴訟費用は被告の負担とする。
事実
原告訴訟代理人は主文第一乃至第三項及び第五項同旨並びに高知地方裁判所安芸支部昭和三二年(ケ)第二五号不動産競売手続開始決定はこれを取消すとの判決を求め、その請求原因として、原告は被告から昭和三十年一月二十二日金十万円を弁済期同年四月末日とし、利息の定めなく借り受け、かつ右債務の担保として高知県室戸市(当時安芸郡)吉良川町字下正毛甲三千百二十五番田四畝二十四歩の土地につき抵当権を設定し、主文第二項掲記どおりの登記を経由した。而して原告は昭和三十一年二月頃被告より同人所有の熊本県八代郡樅木村字樅木九十二番山林一町三反歩の山林の売買斡旋の依頼をうけ、その際原被告間に原告が右山林を代金二百万円で売却すれば、金三十万円を、金二百万円を超えて売却すれば、別途に右超過額を被告は原告に報酬として支払う外、原告の前記十万円の債務を免除する旨の停止条件附契約が成立した。原告は右約旨に従い同年九月十一日右山林を訴外中山繁明に代金三百万円で売却する旨の契約を締結し、前記条件はここに成就し、原告は被告に対し金百三十万円の債権を取得し、同時に原告の前記十万円の債務を免除となつた。仮りに前記免除の特約が認められないとするも、原告は本訴において原告の右金十万円の債務と被告の右金百三十万円の債務とをその対当額において相殺する旨の意思表示をなすものである。よつて原告は右金十万円の債務の不存在確認を求めると同時に被告に対し前記抵当権設定登記の抹消登記手続及び右残金百二十万円の内金四十万円の支払いを求め、かつ被告は原告の右金十万円の債務が存在するとして前記抵当不動産につき、抵当権実行の競売申立をなし、右につき高知地方裁判所安芸支部昭和三二年(ケ)第二五号事件として不動産競売手続開始決定があつたので、原告はこれが取消を求めるため本訴に及んだと述べ、仮りに右訴外中山繁明との前記売買契約が未だその効力を発生していなかつたとするも、右売買契約は昭和三十一年十月十日までには有効となることに確定していたものであるにかかわらず、被告は右契約が存在する事実を知りながら、その直後頃本件山林を原告を介せず、自ら他に売却譲渡し、その所有権移転登記も完了して、原告のなした右売買契約の発効及び履行を不能ならしめ、もつて右報酬契約の条件の成就を不能ならしめた。よつて原告は本訴において右条件が成就したものと見做し、被告に対し金百三十万円の債権を取得するとともに、原告の被告に対する前記金十万円の債務は免除となつたものである。仮りに右免除とならないとするも、原告は本訴において原告の右金十万円の債務と被告の右金百三十万円の債務とをその対当額において相殺する旨の意思表示をなし、右金十万円の債務の不存在確認を求めると同時に被告に対し前記抵当権設定登記の抹消登記手続及び右残金百二十万円の内金四十万円の支払い並びに前記不動産競売手続開始決定の取消を、予備的に請求すると述べた。(立証省略)
被告訴訟代理人は原告の請求を棄却するとの判決を求め、答弁として、原告主張事実中原告がその主張の日時に被告から金十万円をその主張の如き条件で借りうけたこと、そして右債務を担保するため、その主張の如き抵当権設定をなし、その登記を経由したこと、原告主張のとおりの不動産競売手続開始決定があつたことはこれを認めるけれども、その余の主張はすべてこれを否認する。被告は原告に対し本件山林の売買の斡旋方を依頼し、その際右山林がもし金二百万円に売却できれば、仲介料として金十万円を原告に支払い、それ以上に売却できればその超過分は原告に報酬として与えるとの契約をなしたことはあると述べた。(立証省略)